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第7回目

わたしは、書店で働いているが、売場には立たない。書店員でありながら、店頭で本を売ることがほとんどない。書店にいない奇妙な書店員。今回は、わたしの仕事についてお話ししたいと思う。

わたしが働く啓文社は、広島県内に二十店舗を持つ書店チェーン。わたしは、本部でチェーンの一括仕入れ窓口を担当している。とはいっても、書籍や雑誌のすべてを本部が仕入れるのではない。ほとんどの商品は、各店の各分野担当者が仕入れている。店舗では、店長が仕入れの総責任者だが、文庫、雑誌、コミック、コンピュータ、学習参考書など、それぞれ分野ごとに担当者がいて、その人たちが、仕入れから、陳列、返品の抜き出し、コーナー企画までおこなっている。
では、わたしが、どういった商品を本部としてチェーン一括注文しているかというと、こんな感じだ。

(1)単店ではなかなか確保できないベストセラー
(2) 一部の店でよく売れているものの、他の店ではノーマークになっている売行良好書
(3)大型企画商品や、季節商品
(4)販売目標を共有している特約出版社の主要商品

全国の書店チェーンは、いろいろなタイプや規模があり、それぞれ思想も手法も違う。本部一括の位置づけや役割もさまざまだ。極端な言い方をすれば、10軒の書店があれば10通りの考え方、運営方法がある。
コミックの販売方法について、いくつかの書店と意見交換をしたことがある。ある書店は、「Aランク商品は平積み、Bランクは棚に2~3冊、Cランクは棚に1冊。Dランク以下は在庫しない」と言った。それを聞いた別の書店は、Bランク商品の2冊のうち、1冊をストックしてしまえば、Dランク商品も揃えることができるのに」と反論した。この2つの書店は、規模も立地も違うし、競合店の環境も違う。どちらが正解でどちらが間違いとも言い切れない。まさに、それぞれのやり方があるというところだろう。
わたしは、出版社や取次会社の営業の人を心から尊敬している。真反対な価値観を持つ書店を毎日相手しているのだからだ。わたしにはきっとできない。

さて、上記のチェーン一括仕入れの中で、最も頻度が高いのは、(2)である。
各店のそれぞれの担当者が、仕入れの判断のため参考にする主な情報は、販売データと店頭でのお問い合わせである。しかし、販売データは、その店で扱っているものの中からしか出て来ない。『鈴木敏文考える原則』(緒方知行・日経ビジネス人文庫)には、「売れ筋商品は、私たちが売っていない商品のなかにあります。POSからは売っている商品のデータは出ますが、お客様が買いたいという商品が入っていません」とあるが、まさにそのとおりだと思う。
例えば、『平凡な大学生のボクがネット株で3億円稼いだ秘術教えます!』(三村雄太・扶桑社)は、わがチェーンの旗艦店であるポートプラザ店では、発売3日間で、入荷数の70パーセントが売れていたが、調べてみると、わがチェーンでは、この本が入荷しているのは、ポートプラザ店を含めてわずか数店舗だった。このことをポートプラザ店の店長から聞き、発行元に電話したところ、「全国的に出足が良く、さっそく重版を決めた」とのこと。その場で全店分の追加を発注した。入荷していない店ではまだ気づいていないが、わたしはこの時点で、ポートプラザ店や全国の主要書店では発売時から出足良く売れていて、出版社はさっそく重版を決定し、重版のタイミングで、新聞広告の掲載を検討しているという情報を持つことができている。情報の宝庫である書店現場よりも、本部の方が早く情報を入手できた例の一つ。
出版社もチェーンの仕入れ担当であるわたしに積極的に情報提供してくれるし、チェーンでは、何がどれだけ入荷し、どの店がどれだけ売ったかはパソコンを眺めていれば把握することができる。

ふと気がつくと、商品の売行きはわかっていても、肝心の表紙、判型、ページ数を全く知らないことがある。見たこともない本を仕入れるという行為はどうしても違和感があるし、現場から、本を知らない人間が仕入れをしていると思われるのは想像しただけでつらい。仕事中に、書店に行き、売場を見ることがなかなかできないので、休日を利用して、できるだけいろいろな書店を見てまわることにしている。そして、本を読む量だけは、社内NO.1でいたいと思うことがせめてもの抵抗だ。

だから、気になった本、薦められた本は片っ端から読む。負けられない。

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