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2008年05月08日

のぼうの城

  • 『のぼうの城』

  • 【 小学館 】
  • 和田竜
  • 1,575円(税込)
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>> 本やタウン

 「はじめまして」今までの人生で何度この言葉を発しただろう。誕生・入園・入学・就職・結婚…けれど今回ほど不特定多数の方々に向かって言うのはそれこそ初めてだな。せっかくなのでもう一度。「はじめまして。1年間どうぞよろしくです」いや、自分で言うのもナンだけど初々しい。

 そんな初々しい私がオススメする記念すべき第一号は、これだ!
 時は天正18年、信長亡き後天下統一を目指す秀吉は関東の王北条氏を討つため小田原城へと向かった。迎える北条氏直は籠城策を決め支城に対し兵を率いての入城を求めた。この小説の舞台となる忍城もそんな支城の一つである。そして我が愛する主人公“のぼう様(でくのぼうに様をつけた呼び名)”はこの忍城当主氏長の従兄弟にあたる成田長親である。この長親ののぼう状態がすさまじく笑える。よくもまぁここまで言われたものよと思うほどの描写である。醜男で愚鈍で無能で役立たずなのだ…しかしこのでくのぼうぶりが敵将三成最低最悪の戦となる忍城水攻め撃破の基盤となるのである。

 城代となったのぼう様と共に戦う成田家三家老がこれまたすばらしい。朱の槍を持つ猛将正木丹波。兵書をこよなく愛する戦未経験自称毘沙門天の生まれ変わり酒巻勒負。そしてなにかと丹波にライバル心を燃やす巨漢の豪将柴崎和泉。彼らはたった500騎でもって石田軍2万3千騎を迎え撃つのである。いやもう痛快である。爽快である。日本人の判官贔屓をズドンと刺激するのである。それぞれが地の利人の利を生かした戦法で石田軍を叩きのめす場面では思わず「ひゃっほぉっ」と叫んでしまうほどだ。しかしその勝利が三成の戦魂に火をつけてしまった。

 「忍城水攻め」ここからがクライマックスである。天主を除き水没した城をいかにしてのぼう様は守ったのか、その秘策とは…あぁ書きたいっ。しかしこれを書いてしまうと読む楽しみが無くなってしまうのだ。いやいや残念。とにかく読後、なんとも言えない遠赤外線的温かさに包まれるのである。いい。これはいい。とにかく読んで損無し、満足必至。老いも若きも男も女も心底楽しめるエンタテインメント時代小説なのだ。時々出てくるワンポイント歴史講座も親切だ。

いや、これはぜひとも某放送局年末恒例ぶち抜き時代劇に採用してもらいたい。視聴率40%間違いなしだ。