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不倫は、しないですむならそれにこしたことはない、と思う。

 しないですむなら、とか、それにこしたことはない、とか、何だかはっきりしない物言いなんだけど、不倫について、私が思っていることを言葉にするとそうなってしまうのだ。
 何だかなぁ。不倫はしちゃいけない! とか、えぇいっ、愛に不倫もくそないっ! 不倫だろうが何だろうが、愛は愛なんじゃーっ! と、はっきりと言い切れるといいんだろうけど、それができないんである。

 私は不倫はしたことがない。でも、これは、たまたま私がしたことがない、というただの事実である。それは、私が交通事故に一度もあったことがないとか、生まれてから一度も骨折したことがない、というのと同じことだと思うのだ。
 何だか、こう書いてしまうと、不倫を交通事故や骨折と同じレベルで語っているみたいだけど、そうなんである。少なくとも、私は、不倫っていうのは、交通事故や骨折みたいなもんだ、と思っている。
 好きになった人が既婚者だった、というのは、これはもう、しょうがないことだと思うのだ。運が悪かった、というのとは少し違うけど、望むと望まざるとに関わらず、たまたまそうだった、ってだけのことだ。
 そりゃぁね、既婚者だから、って自分に縛りをかけて、好きだっていう気持ちをぐっと押し殺して、それでその感情をうまくコントロールできる人だっているとは思う。でもですね、コントロールできるくらいの感情は、それは恋ではない、と私は思うのだ。
 好きだ、って気がついたら、もうその気持ちが引き返せなくて、何とかそこから目を逸らそうと思っていろんな努力をしても、でもどうしても駄目で、その人を好きだ、という気持ちに正直になるしかない、という状態こそが、恋なんじゃないか、と思うのだ。
 で、たまたまその恋が成就した時、相手に妻なり夫なりがいた場合は、不倫、という呼び方になるだけのことなのだ。
 そういう意味では、不倫、というのは既婚者が相手の想いを受け止めさえしなければ成立しない、ともいえるわけだけど、でも、それが成立してしまうのは、やっぱり既婚者だって恋をするわけで、それを止めるってのは難しいことだと思う。
 じゃぁ、私が既婚者の恋愛に賛成か、というと、そうではない。絶対反対! とまでは思わないけど、できればしないほうがいいんじゃないの、とは思っている。だって、それが結婚ってことでしょ、と思うから。
 結婚というのは、私は(もしくは僕は)、この人のことが好きなので、二人だけの関係をこれからずっとやっていきたいと思います、という、第三者に対する所信表明なわけだ。ついては、法律的な縛りもヨロシク! と。あからさまにいうなら、「アタシの男に手ぇ出すな!「オレの女に手ぇ出すな!」ということを、法律的に明らかにすることが結婚なんである。
 しかも、それは誰に強制されたことでもないわけで、あくまでも自分が望んでしたことなのだから、そのことに対する責任ってものがあろう、と思うのだ。そして、その責任ってのは、結構重かったりする。
 それでも、その責任すらチャラにして、恋に走りたい、という気持ち、それも分かる。走らないほうがいいよー、と思いつつ、走りはじめた人を止める術を私は知らない。
 もし、私の既婚の友人が道ならぬ恋(って、こういう言い方自体、問題あるよなー)に落ちたとして、もしその友人に子供がいたなら、かなり真剣に思いとどまらせようとはするだろうけど、子供がいなかったら、「本当に好きならしょうがないけど、も一度よく考えてみれば」ぐらいのことしか言えない、と思う。

 ダンナの友人であるK君は、不倫の真っ最中だ、という。しかもその相手のオネェちゃんというのが、SMの女王様だというのだから、うーん、事実は小説より奇なりだなぁ、と私は何故か妙に感動したりした。
「じゃぁ、離婚するわけ?」と聞いたら、「離婚は考えてない」と言う。ちえっ、こういう男が一番困るんだよなー。自分はカミさんも子供も大事だし、でもオネエちゃんとも離れられない、って、そりゃ美味しいとこどりじゃんか、と私は内心ムッとする。「奥さんはそのこと知らないんでしょ」と聞くと「あったり前だ」と言う。「そんなのズルイじゃん!」と、私は思わず言ってしまった。すると。K君は私の発言こそ信じられない、という顔をして、言った。
「何でー? 俺、カミさん、愛してるもん」
 えぇいっ、口の中開けて見せてみやがれ!舌が二枚あるんじゃないのかーっ! と思いつつ
「じゃぁ、オネェちゃんとは遊びだってか?」と、さらに追求すると、K君はますます、何言ってんだ、こいつ?という顔になって、
「俺は、二人のことを愛してんの。カミさんのことも、オネェちゃんのことも、二人分、ちゃんと愛してんのっ!」
 二人分愛してる、と堂々と、何一つ悪びれることなく言い切るK君に、私は圧倒されてしまったのだった。同時に、こういう男こそが、女にとって一番迷惑なやつだ、と、これはもう、はっきりと確信した。で、それ以上、何も私は言わなかった。いや、言えなかった。
 あれから3年。K君の「二人分の愛」は、未だに継続中であるらしい。奥さんにも、オネェちゃんにも、十分すぎるくらい失礼なやつだ、と私は思うけど、K君が、奥さんもオネェちゃんも、どちらも泣かせてない、という事実はスゴイことだ、と思う。

 不倫は、しないですめばそれにこしたことはない。でも、しちゃったのならしょうがない。
 恋ってのは、基本的に1対1でするもんだ。相手が既婚者じゃなければ、それはただの「二股」だ。「二股」かけられることには抵抗があるのに、不倫なら認めてしまうっていうのは、ちょっと違うんじゃないのかなぁ、とか、とか、とか。色々思ってはみても、それでも私は、やっぱり、不倫はしちゃいけないとは言い切れないのだ。不倫を否定することは、恋を否定することだからだ。少なくとも、私はそう思う。
 でも、でもね。もし、不倫が辛くて辛くてたまらなかったり、自分が自分を好きでいられなくなる、何だか大きな迷子になったみたいな、そんな気持ちになってしまう状況だとしたら、それは、おやめなさい。
 恋をする一番の条件は、自分が自分を好きでいられる、ってことなんだから、さ。

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