« 前の記事 | 最新 | 次の記事 »

第121話  ウエちゃんのタクシーお客さん日記

 爆笑問題が『ハインリッヒの法則』(祥伝社)…という本を出した。それで思い出したが民族学博士と名乗る客が乗って来た。大概、自分から大きい事を言う奴には法螺吹きが多い。タクシー運転手やマスメディアに出たがる一部のタクシー会社経営者に多いパターンだ。その自称・民族学博士がウエちゃんを見るなり「あんたぁ、ベルクマンの法則みたいな人やなぁ!」…と言った。なんやねん、それ?
 日本経済新聞に『デジタル万引』…と言う記事が載っていた。(なんのこっちゃ?)…と思って記事を読むと、書店の本をカメラ付携帯電話で撮り、後から携帯画像でタダ読みをすると言うものらしい。世も末じゃ!そんなに読みたいんやったら買え!買うカネがないのやったら図書館へ行け!馬鹿タレが!(ドン!)ワイの本を携帯で撮っていたら絶対に後ろから蹴り上げたる!
 タクシー運転手は孤独だ。冷暖房完備の小さな小さな密室で12時間から20時間を過ごす。そりゃ陰金にもなる。深夜勤務のタクシー運転手はNHKラジオのラジオ深夜便をよく聞く。そのラジオ深夜便を聞いていたら海外翻訳本の特集だった。たどたどしい口調の中年のオッさんが、NHKの女性アナウンサーを相手に鋭く的を射た翻訳本の解説をしていた。今までに聞いた事がない声だ。(この人、誰やねん?)…と考えながら聞いているとコーナーの最後に女性アナウンサーが「本日の解説は青山南さんでした!」…と言った。げっ!ショック!ウエちゃんは青山南さんは妙齢な知性溢れる女性だと思っていた。愕然!本の雑誌(紙版)でお馴染みの青山南さんはオッさんだったのか!なんでそんな勝手な想像をしたんやろ?南ときたら南沙織だ。三波伸介でも「肉も野菜もいっぴゃ~ひゃ~あとるでよ! みんなウハウハウハウハ喜ぶよ! どぇりゃ~、うみゃ~でかんわ!ハヤシもあるでよぉ~。いっぺん食べてみてちょ!」…の南利明でもない!南といえば南沙織だ!南沙織といえば黒い肌に笑顔から零れ落ちる白い歯。そして風に靡く緑の黒髪!(どんな黒髪やねん?)青山南さん…ううぅぅぅ!なんで男なん?今から女にならへん?

 何かの雑誌を読んでいたら…(多分、本の雑誌だと思うのだが?)、世田谷区上野毛(かみのげ)の活字が目に飛び込んで来た。おぉ~、上野毛!その上野毛に行く用事があった。目黒付近からかタクシーに乗る。今日のウエちゃんはタクの運ちゃんではなく、タクシーのお客さんである。
「上野毛の方へまで頼んますわぁ!」…とタクシーの運転手に告げると、
「上野毛ですね?解かりました。ありがとうこざいます」
 と返事が帰って来た。びっくりした。車内も煙草臭くない!東京のタクシーに乗って行先を告げるて丁寧に復唱されたのは初めてだ。その上に礼まで言われるタクシーに東京で乗った事なんかない。世も末か?
 暫らくの沈黙が続く。除々にビルの数が少なくなって行く。ぼけぇ~と、外の景色を見ていると運転手が突然「お客さん、関西からなの?」…とタクシーは前に走っているのに後ろへ振り返って聞いて来た。
「大阪やでぇ、なんで解かんねん?」…とウエちゃんが聞き返すと、
「だってさぁ、解かるよ誰だって。その喋り方がさぁ、さんまと一緒だよ!がっははは!」…と大笑いしょる。(一緒にすな!)
 さらにタクシー運転手は振り返りながら「上野毛まで幾らで行くと思います、お客さん?」…と笑いながら聞いて来た。
「ナンボやねん?」…とウエちゃんが聞き返すと、
「ほらほら、やっぱり上方の人だ。珍しいね。おれさぁ、関西の人とはほとんど喋った事がないのよ。もっと喋って!ね。ね。ね。」…と頼んで来た。
 余りにもアホ臭いので無視していると、チラ、チラと此方を見ながら、
「お客さん、上野毛の近くに川が流れているの知ってます?」…と聞いて来た。
「あぁ、知ってるでぇ、玉川でんがぁまんがなぁ!」…とワザと答えると、
「わぁ~、大阪弁!もっと喋って、もっと喋って!ね。ね。ね。」
 と又、頼み込んで来る。タクシー運転手の喋りは迷惑だ!人のふり見て我が身を振り返る。アホくさいので完全に無視をしていると、
「上野毛のさぁ、玉川を挟んださぁ、向こう側の町は下野毛なんだよ!おもしれぇだろぉ?ねぇ、お客さん、面白いでしょう?」…と後ろへギョロッ!と覗き込んで来た。
「どこがやねん?どこがオモロいねん?」
「だってさぁ上の毛のさぁ、川の向こうがさぁ、下の毛だよ!大爆笑じゃん、お客さん!オレって面白いでしょう?」
 と東京のタクシー運転手はしょ~もない下ネタで自画自賛!
「しゃぁから、何がオモロいねん?♪…オ・マ・エ・ハ、ア・ホ・カ!…♪」
「な、なんなの、お客さん?それは?」
「横山ホットブラザースのノコギリやんけぇ!」
「な、なんですかぁ、それは?お客さん?い、意味不明です」
「あんなぁ、お前なぁ、そのネタを毎回、客に言ぅてるやろぉ?」
「ど、どうして解かるの?」
「もっとオモロいネタを教えたろかぁ?」
 と言う事でウエちゃんの取っておきのネタを、何故か東京のタクシー運転手に披露。今日のワイは客。なんで客のワイがタクの運転手を喜ばせなアカンねん!
「オランダの海沿いのカジノもある有名なリゾート地を知っとるけぇ?」
「さぁ~?オランダが何処にあるかもしりませんけど…?」
「スケベニンゲンやんけ!」
「す、助平人間~!」
「そうや、スペルはなぁこぉ書くねん」…とウエちゃんがいつも持ち歩いている取材ノート(ネタ帳)に『Scheveningen』…と地名のスペルを書いて見せると、
「これで、助平人間て読むの?…お客さん?」
 と東京のタクシー運転手はタクシーを走らせながら左右にヨロケながの大爆笑!ほんまはスケベニンゲンの読みは現地読みにするとちょっと違うらしい。
「今度は笑い過ぎて失神したらアカンでぇ!」
「そんなに凄い話なの?」
「四千年の歴史や!中国や!中華人民共和国や!」
「中国ですか?」
「黒龍江省は知ってるか?昔の満州あたりやな。牡丹江にある名刹の湖や!」
「へぇ!名刹ですか?凄いですね。…で、名刹ってなんなの?」
「アホはほっといて先へ進むでぇ!鏡泊湖(きょうはくこ)。鏡の泊の湖と書くねんけどな中国読みではチンポ~湖や!」
「ち、ち、チン…!ひぇ~~~!」
 それからバリ島にある『キンタマーニ高原』に、南太平洋のバヌアツ諸島の『エロマンガ島』や、トルコの『シリフケ』に、アフリカの『Chinko川』を懇切丁寧に教えてやった!
「どないや?参ったか?」
「お客さん、恐れ入谷の鬼子母神!」
「なんやねん、それ?アホか!黙って運転せぇ!」
「あっしの修行が足りませんでした!ううぅぅぅ!」
 と東京のタクシー運転手は意気消沈。
 タクシーを降りる時に運転手がウエちゃんを追いかけるように、
「お客さん!お客さんの話は面白過ぎるよ!お客さんさぁ、大阪でさぁ、タクシー運転手をやったら絶対に人気が出るよ!やりなよ、タクシー運転手!」
 と助手席側の窓を全開にして大きな声で言った。
(アホかぁ!もぉ、とっくに人気もんのタクシー運転手じゃ!ぼけぇ!)
 と東京のタクシー運転手に吉村道明の得意技の回転エビ固めと、ビルロビンソンの人間風車を心の中で食らわした大阪のタクシー運転手のウエちゃんでした

« 前の記事 | 最新 | 次の記事 »

記事一覧

Powered by
Movable Type 3.34

ページTOPへ