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第120話  ゲロッパ!

 嫁はん一行が白い巨塔的観戦チケットを握り締め、阪神甲子園球場の特等席に巨人戦を見に行った。ウエちゃんは自宅で途中までテレビ観戦。この日の解説は掛布と川藤。声だけ聞いたらバウバウ松村が解説をやっているような気もする。そして30分ほど仮眠して夜のタクの運ちゃんに。試合終了はJR大阪環状線某駅の高架脇にある『タイガースファンの店』…という場末の居酒屋の横で待機して絶叫ラジオ中継で聞いてた。この店の親父は某私設応援団の団長なので甲子園に行き留守。店は留守番客で大騒ぎ!親父が留守の間に飲みたい放題!食べたい放題だ!
「運ちゃん!ビール飲めやぁ!焼酎か?関東煮(かんとだき)食べるか?」
 とやりたい放題。ほんでもえぇんです。タイガースファンの店だから。この店、実は超有名店。ほんでもまだ一度もマスメディアには出た事がない取材拒否の店。
 時々、似非タイガースファンの観光客が、
「運転手さん、何処かにそんな阪神ファンが集まる店を知らない?」
 と聞いて来る事がある。
「お客さん!ホンマに阪神ファンでんなぁ?」
 とウエちゃんが遠山左衛門尉影元のような桜吹雪のチョ~流し目で聞くと、
「も、も、も、勿論だよぉ~!やんなっちゃうなぁ!清原なんか大嫌いさぁ!」
 と言いながら口元がピクピクッ!…と痙攣している。
「ふふふ!そぉ~~~でっかぁ!えぇ店を知ってまっせぇ!宜しいかぁ?」
「お、お、面白そぉじゃ~~~ん!く、く、桑田も嫌いさぁ!」
「ほんなら行くけど、もぉ~、逃げられまへんでぇ!ひっひっひぃ~~~!」
 と脅かして連れて行くと、殆どの似非タイガースファン観光客は気絶寸前で店から匍匐前進で出て来る。そんな取材完全拒否のバイスな居酒屋なのである。
 だが正確に言えば一度だけ親父が渋々取材に応じた事がある。1996年の朝日新聞アエラの第49号。11月20日臨時増刊号P14の特集巻頭1ページ記事だ。タイトルは『阪神タイガースをこけおろす、そぉいう飲み屋でんねん』…という抜群のセンスと筆力の記事。素晴らしい!筆者はワイです。ははは!す、す、すんまへん。後年、担当だった副編集長が偶々ハイジャック機に乗っていた。翌日の朝日新聞社会面にハイジャック同乗記を書いていたのには驚いた!
 試合はムーアの好投で辛勝。6回に阿部の巧打をジョージ・アリアスが美技で捕球。これが抜けていたら流れは変わっていた。地球の東の端にある異国の地でアリアスの調子が出ない。真面目なだけに可哀想だ。髭のムーアもウエちゃんと同じ事を思っていたのか試合後のインタビューで、
「6回のアベのヒッテイング!ジョージがよく取ってくれた。本当に助かった!」
 とアリアスを思って誉めちぎった。
 しかし、何を思ったのか通訳がこの部分を喋らなかった。だからムーアのアリアスに対する思いやりは全国数千万人のTV桟敷には伝わっていない。これがもしあの阪急ブレーブスの名内野手で名通訳のチコ・バルボンなら何を言うだろうか?
「ごっついこと調子が良かったわなぁ!わっははは!ほんでやなぁ、6回のアリアスのプレーで助かったわなぁ!猿が木から落ちるやわな。わっははは!梅田の阪神百貨店の地下のいか焼きは、思っくそ美味いなぁ!わっははは!ワイ、むっちゃ好きやねんけど家が神戸やねん!梅田、ちょっと遠いわなぁ!がっははは!ほんでから、きょうはおおきにぃ!まいどぉ!おいど!…言うてムーアが言うてるわぁ!オマエ、もっと質問アルカ?」
 とバルボンなら答えるはずである。
 トラッキーの中身がムーアの髭事件でクビになった!ほんなら、この通訳さんかて処分対象とちゃいまっかぁ?阪神球団さま。

 台風6号が来るという前の日。大阪は梅雨前線が台風に刺激されて強い風と雨。市内某所の映画配給会社の試写室にてウエちゃんが大好きな井筒和幸監督作品の『ゲロッパ!』…を試写。
 前日に「一身上の都合で明日は休みます!」…とタクシー会社に書面で報告。それを見た川田係長が「はぁ~?」…と首を捻っていたら後ろから陣内部長が出て来て「ウエちゃん!ついでやから、一身上の都合で辞めたら?」…と啜り寄って来た。
「えぇんですかぁ、部長?ワイ、タクシー運転手を辞めたら梁石日センセみたいに全部を書きまっせぇ!えぇんですかぁ?タイトルは『浪花タクシー残酷日記』…なんかどう?ふふふっ!」
 と遠山笑いをすると、
「心置きなく明日は一身上の都合で休んでくれぃ!ううぅぅぅ!」
 と陣内部長が泣き崩れる。
 井筒監督といえば岸和田在住のごんたくれ作家、中場利一原作の『岸和田少年愚連隊』(映画同名)…である。井筒さんは、けったいな笑らかして泣かす映画を撮らしたらピカイチの監督。40席弱の試写室は井筒作品とあって超ょ~満員。リイチ君が来ていたらカツアゲされるので、こっそり逃げようと思ったが無問題。
 さてぇ、みなぁさん!ありがとぉ。(←誰?)この映画のタイトルになった『ゲロッパ!』…はもぉお解かりですね?そうなんです!あのJBなぁんです。旅行会社とちゃいまっせぇ!それはJTB。映画の中でもJBの曲が沢山、沢山、沢山かかります。けったいななJBも大活躍。
 映画は大阪の極道の親分に西田敏行。昔、別れた子供に常盤貴子。西田敏行と兄弟分の親分に岸部一徳。その嫁はんに藤山直美。完全にアホの子分に山本太郎。その他に岡村隆史、木下ほうか、トータス松本、ラサール石井、徳井優、塩見三省、長原成樹と関西出身の役者が勢ぞろい。な、なんと、マドンナ、美空ひばり、森進一、桑田佳祐も御出演!…思っくそバッタもんやけど。
 映画途中の女性タクシー運転手を演じる寺島しのぶと西田敏行の車内での会話シーンは、普通のドラマならお涙頂戴の場面である。しかしそこは井筒映画。泪が流れる前に大笑いさす。『ゲロッパ!』…のロードショーは8月から全国順次。大阪地区は8月30日(土曜日)からの公開。この夏、絶対に笑らけて泣けるJBファンも納得の音楽娯楽映画だ。みなさん、お先に見てすんまへん!
「昨日、ゲロッパ!見てきましてん」
 と翌日早速に大阪のオバちゃんの客にタクシー内で映画の広報活動。
「あの人なぁ、ちょっと口が大きいんとちゃう?なぁ?」
「ん…?口…?(なんのこっちゃ?)」
「確か旦那はキンキンやったよねぇ、運ちゃん?」
(大阪のオバちゃん相手に話をしていたら眩暈するわ!)

 2年ほど前に紹介した仲宗根みいこの本。沖縄のボーダーインクの『ホテル・ハイビスカス/1巻~4巻』(紹介時は3巻まで)この夏、話題の沖縄音楽映画『ホテル・ハイビスカス』…になって全国公開間近!新潮社からも絶版になっていた講談社の復刻版が発売。沖縄のボーダーインク、講談社に新潮社。元祖、本家、家元、入り乱れての販売合戦の模様。
 その沖縄。慰霊の日の早朝。友人からの近況報告のメールが届く。台風6号が去り梅雨が明けたらしい。今、沖縄でヒットチャートの一位を驀進しているのが『BEGIN』…だと言う。「おぉ、そうか、そぉか!BEGINの『島人の宝』が一位か?」…とメールを打ち返すと「違うさぁ!一位は『オジ~自慢のオリオンビール』さぁ!」…と返事がきた。
 なんやねん、それ?ほんまにワケが解からん!

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