美人韓国人女学生達は結局、薬局、国際航路のフェリーを1時間近くも遅らせて帰って行った。
昔、別の国際定期航路の日本人船員さんが、ウエちゃんのタクシーに乗りこんで来た時に聞いた話では、
「定期便は発着両国の運輸関係の役所からの許可に基いて運行認可されているので、特別な緊急事態を除いて延着は厳しく処分されるんやぁ!」
だそうである。
「その為に遅れて出航した場合は時間を取り戻す為に速力を上げるわなぁ。速力を三倍に上げたら三倍の燃料がかかるのではなく三乗の燃料がかかるねん!」
ほぉ~、そぉか、三乗か!…で、三乗はどんな計算やったかいなぁ?その時間はクラブ活動の遠征で欠席していたはずやから習ってへん!
ワイは別に急ぐ用事もないし仕事は暇なので、釜山行きフェリーが大阪湾の大関門に消えるまで岸壁にタクシーを止めて見送った。
国際フェリーが再離岸する時に韓国の女学生達が船のデッキに出て、
「ナンジャ!カンジャ!ナンジャ!」
とウエちゃんに向かって拳を突き付けて大声で喚いている。
ウエちゃんも彼女達に向かって大声で、
「もぉ、二度と来るなぁ!」
と心を込めて叫んでやった。恐らく女学生達も、
「二度と日本に来るかぁ!デ~ハミング!(チャチャチャ)」
と言っていたのだと思う。
今日は最初の仕事から国際親善に貢献した。気持ちがえぇ!
再び海遊館に戻ると前から数えて6台目。1台前は依然としてS交通の谷口さんである。この1時間ちょっとの間に先頭車輌は数台出て行ったがその後、誰も後につけていない事になる。ほんまに暇である。
「エライ、遅かったなぁ、ウエちゃん?」
と谷口さんがタクシーから出てきた。
「暇やから船が出るまで見てましてん!ほんまに往~生ょ~しまっせぇ!」
ウエちゃんが怒りながら谷口さんのタクシーを外から覗くと、テレビのよぉなモンが車内で光っている。
「え゛~~~っ!それってナビとちゃいますのん?」
「そぉや!ナビやぁ!それがどないしてん?」
と不思議そうな顔をするS交通の谷口さん。
「すんまへん?谷口さんとこの会社は全車両にナビ付いてますのん?」
「付いてるでぇ!さっきの道を知らん運転手の車にも付いてるでぇ!」
と平然な顔つきの谷口さん。
「もぉ、一つすんまへん?ほんならなんでぇ、さっきの事件の時に、あの運転手はナビを使わへんのですかぁ?ナビを使ぉ~たら一発で目的地に着きますやん!」
ウエちゃんが強い口調で谷口さんに詰め寄ると、
「なんでタクシーにナビが付いてると思うねん?お前はアホか!」
と結成50周年の横山ホットブラザースみたいな事を言う谷口さん。
「はぁ~?…?…?」
「あんなぁ、ウエちゃん!タクシーにナビが付いてるんは運転手がテレビで住江競艇と園田競馬を見る為やろがぁ!知らんのかいなぁ!」
「姫路競馬と尼崎競艇もやでぇ!」
と横からチャチャを入れるヤタケタ交通の斑鳩さん。
「びわこと岸和田も入れたってぇ!」
といらん事を言う非案前交通の千早さん。
そぉか!知らんかった!タクシーのナビはその為にあったんやぁ!
そぉ言えば数年も前にウエちゃんの会社でも組合と会社の団体交渉の場で、
「AMラジオだけでなくFMも搭載しろ!」
と言う団交が行われたらしい。
その結果現在は、全車両のタクシーラジオにFM聴取が可能となっている。これは競艇好きの運転手の提案で、競艇場の外の待機場で競艇場が放送するミニFM局の実況生中継が聞きたい事を要望したらしいと聞いた事があるんやけど…?
2時間ほど待って先頭に。陽もすっかり暮れた。先頭になって15分。若い夫婦とちっちゃな可愛い女の子が乗り込んで来た。幼い姉妹は2歳と5歳ぐらいやろぉかぁ?母親に問いかける一言一言がめっちゃ可愛い!母親もけったいな質問に丁寧に答えている。ウエちゃんの家へ拉致したいぐらいに可愛い姉妹である。頭の良い親と糞馬鹿親は子供との会話を聞けば一目瞭然だ。10年近く競馬ウマの如く前だけ向いて運転し、耳で商売しているタクシー運転手にはよく解かる。
行先はとても嬉しい長距離だ。憎そい(憎たらしい)客でも長距離なら神様、仏様、稲尾様に見えるのに、優しく賢い両親と連れ去りたいほどの幼い姉妹なら天使のよぉに感じてしまう。
月曜日の夕方の道路は大渋滞だ。スピードを上げてはブレーキを踏み、スピードを出しては停車の連続だ。むっちゃ寒いので車内は体感で30度近い暖房中。
「お嬢ちゃん、大丈夫かぁ?気持ち悪い事ないかぁ?」
とウエちゃんが聞くと、
「だいじょうぶ!だいじょうぶ!オジちゃんがんばってぇ!」
と両親を殴って気絶させて連れ去りたいほど可愛いことを言ってくれる。
今までよく喋っていた幼い姉妹は喋り疲れたのだろうか?静かになった。
ほどなくすると後から「うっ~~!」…と言う呻き声が。その呻き声が数秒後には「おぇ~~!」…に変わった。
あぁ~~~!やってくれた!
恐そる恐そる振り返ると父親がシートに仰け反ってフリーズ状態。父親の左上半身に蚯蚓のようなブツが蠢いている。シートに目をやると煮トマトのようなものが…?
「あれぇ~?お嬢ちゃん、さっきトマトのスパゲティを食べたぁ?」
ウエちゃんが満面の笑顔で聞くと、
「ううぅぅぅ!うぇ~~~ん!ごめんなちゃ~~い!」
とお姉ぇちゃんのほぉが大声で泣き出した。
別に構わない!ウエちゃんは天使の女神の贈り物は許す!
許せないのは糞女や糞オヤジの酔っ払いの贈り物だ!あいつらは出しても全く反省していない。贈り物吐き糞女や糞オヤジの8割か9割は、
「タクシー運転手のクセして、お前が掃除しとけ!ワシらはカネを払う客じゃ!」
と思っている。
そんな奴はケツの穴から指を突っ込んで奥歯をガタガタいわしたる!
天使の贈り物は糞酔っ払いの贈り物と違いほとんど臭わない!ブツを備え付けのティッシュで掻き集めたが心地よい女神の匂いが漂う。
トランクを開けると交換用のシートカバーがない!直ぐに車庫に帰ってシートカバーを替えて掃除をし、心地よい天使の匂いを消す為に本日の仕事は終えて一晩窓を全開にする事を。そして命は取らないから別に何も気にしなくていい事を伝えると、余計に良識のある両親は揃って恐縮しきりである。日本野鳥の会にカウントして貰いたいほど「すみません!」「ごめんなさい!」…を連発する。
降車の際には「いらない!」…と言うのに個人的(会社にではない!)に過分な心付けまで戴いた。
「なりませぬ!なりませぬ!止めてはなりませぬ!」
と仕掛人梅安に出てくる妙心尼の三島ゆり子のような事を言いながら、心付けは殆ど9割方胸のポケットに入っていたのだが…(恥かしぃ~!)
数日後、この両親からウエちゃん宛に会社へむっちゃ沢山の高級キャンディーとチョコレートの詰合せが届いた。
これってひょっとこいて、ワイのスマートな体を見ての判断なん?
前置きがめっちゃ長くなったんやけど…『苦尽甘来』とは正しくこの事やねぇ!この四文字を書きたくてここまで引っ張りました。がっはははは!エライ、すんまへん!